田圃とかえる
ブロックを跳び終えると、
小さな路線とマンションの背中と民家とで、
正方形に囲まれた田圃が広がる。
季節によらず、
かえるがげこげこげげげと年中ないているような気がしている。
実際はないているときもあれば、
ないていないときも。ある。
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ようやく坂を降りきった。
静かな重力のあるゆるいカーブを背中にして。
広がる正方形の田圃を脇に抱えて。
ほんの数歩、進む。こと。だ。
こんな華奢で折れそうな細い道沿いにも、
家の入り口がある。
車も、自転車すらも進入することのできない、
か細い線上に沿って。
入り口が、生活がそのさきに広がっている。
いいとこに住んでいるよ、まったく。
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流行ってなんだ。
くそくらえ。
うらやましい家だな。
ちくしょう。
気持ちさえも、夜は入り込んでくる。
電車はもう走っていない。
かえるがないている。
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左に直角に曲がる道があり、
直進して体を90度まわす動きをしてみた。
さっき泡のように浮かんだ感情を背後の田圃に捨てる。
かえるは気のせいで、そんな音はしていない。
ないていたのは。