一人分のわたし

痛感している。

ひととひとがいるということ。

わたしとあなただ、ということ。

わたしの眼、あなたの眼。

わたしの口、あなたの口。


    ●


けれど、実感できないでいる。

いまだに。

わたしとあなたは違うということ。

あなたとわたしは違うということ。



    ●


「違い」といっても、感じ方の問題で。

誰もが、わたしとあなたは同じように考えている、と。

あなたはわたしに包含される、と。

肥大化するわたしに気がつかない。

どこかで膨張したわたしを、わたし一人分に縮小させないといけない。

きっと、そこらへんが曖昧で。


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悟る。

とか、

目覚める。

とか、

大げさな見栄があるけど。

そういいたくなるほどに、一人分のわたしの実感は困難と思う。


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具体化すれば、例えば食事だろうか。

目玉焼きの焼き方。

味噌汁の具。

そんなん、ひとりひとりの家庭の味があって、やりかたもあって、

舌がからだがそれに親しんでるんだから、

違うやりかた、見え方、味とか、違和感だらけで。

わたしは嫌だとかんじてあなたは好きだと感じる。

単純にそのままの違いを容認できない。

見逃さず、看過出来ない。

どちらも、「わたしの味」の素晴らしさ、「あなたの味」の違和感を主張する。


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肥大化するわたしの静かな暴力性に気づかない。

生きてきた時間の長さはあまり関係がないような。

どこらへんまで一人分のわたしにサイズを調節できるか。

自覚。

アジャスト。