ベンチ

ここに殺人者として少年が座った。

何の変哲もない公園のベンチで。

ここに痴呆として老人も座った。

ベンチ。

土足で駆け上がった幼年期の足跡と。

闇のそばで、少年が殺人の手と殺人の感情と、

殺人の足首で歩いてきたのだと。


    ●


公園の内側で、上空を見上げる。

柵が視界から消えて、上空の方向へと空間が逃げあがっていく。

崩壊のような、解放のような。

形状を持たない上空に、

ノミコマレルノミコマレルノミコマレル。


    ●


当事者でないのに同調する感情。

予想する具合。

首から上の存在が空白な、おお、おお。

線路に赤いランプ、白々とした蛍光灯。

上がる黒と黄色の棒も、寝静まる闇が。


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食料を買いに行くのだ。

その間に、マンションの輪郭線をぬけ、

正方形の田圃に吐き捨て、

橋から光っていない水面から反射を見、

2.00mの外灯に照らされた公園で殺人を考えた。

歩き、動く、一連の流れの中で、

どれほどのことが体内で生じている?

どれほどのものが通過している?

そこに甚大な量のなにかがいったりきたりしている。

無意識なぞ、信じられるか。


    ●


意識の中に動きがある。

動きから意識が生じる。

どちらも過不足な関係性の連環から外れることもない。

踏切を渡る。

春キャベツがおいしい。