死なないで
生きていく中で、死なないでと言われた。
「死なないで」と、言われた。
聞いたときはそこまで意識しなかった。
聞いた後、何日か経ってから、何週間か経ってから、
「「死なないで」と言われたのだ」と感じていることに気づいた。
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私は生き急いでいるつもりはないし、むしろその逆である。
新しいことも最初の何回かの猛烈な感激の中に消えてしまうし、
あなたとの出会いも、静かな流れに小さな急流が吸い込まれるように、
ゆっくりと、確実に消失していってしまいました。
やりたくないことはやらないし、
やりたいことはやりたいからやる、
というはっきりした価値観の中に生きているようで、
実際は信念にあこがれている小人物に違いないのだ。
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知らないことに対する解答や回答はいくつも用意されている。
欲求を満たす手段も、夜昼関係なく散らばっている。
ああ、それなのに。
「死なないで」と言われたのだなあ、と。
生きてください、と。
不在感。ここにはいないわたしを求めるあなたは。
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心があって、入ってくる感情水路から、愛が流れてくるとして。
心の蔵に溜まりきらない。
わたしの、わたしの、「死なないで」に対する答え。
あわよくば正解を、注いであげたいと思ってるんだ。
些細なひとつの言葉が浸透して、わたしの体を覆いつくさんばかりだ。