フィギュアを買った
この1,2週間のあいだにいわゆる「フィギュア」を立て続けに購入した。
斜めに構えて、キモいと突き放す潔さもないし、積極的に萌える気力もない。
のくせ、額装した「フィギュア」から、ケースから取り出したフィギュアになってしまった。
今、目の前にあるフィギュアたち。
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きっかけは、NHKの特集番組を見てしまったことに一端があると思うのです。
海洋堂というフィギュアを沢山つくってる会社を知った。
そんで、そこには原型師というひとがいるってことも。
ボーメという原型師のおじさんがクローズアップされてて、求道者のように朝から晩まで美少女キャラクターのフィギュアを作っていた。
なんというか、ボーメさんはただひたすらフィギュアを作ってた。
ただ黙々と手を、動かしてた。
ミケランジェロだかの彫刻の写真を傍らに置いて、
「こんな風に服の襞(ひだ)を表現したい」
本気の人間がおるで!
ここに本気の人間が!
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えーとですねボーメさん。
わたしはあなたに萌えました。
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むちゃくちゃ高揚したこの気分を滅却すべく、フィギュアを一体買ってみるかと。
そういうね、気分にさせられたというか、なったのです。
同時にフィギュアって何なんだ?知りたい、とも。
美少女フィギュアはもともと紙の中の平面に描かれたキャラクターを立体化したもの。
大きな瞳、非現実的な髪型や服装。
非現実を現実に近い形で表現する方法として。
フィギュアが存在する奇妙さ、ある不気味さ、そしてフィギュアを取り巻く群像。
秋葉原を聖地としたお祭り騒ぎのイコン=フィギュア。
キモい。
そういう文脈で避けてしまう存在。
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例えば、このフィギュアが目の前に置いてあるとして。
そして、普段の暮らしがあるとする。
造型としての素晴しさを見るのではない。
大きな胸と、露出した肌、均整の取れた理想的な肢体。
デフォルメされた瞳。
そういうところを見る。
エロの部分が最初に決まってる。
もうね、これが日常の景観にあれば、変態、キモいわけです。
グロもそう。日が差してはいけない、道徳的に、と。
エログロは間違いなく日陰者、細々と。
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そこに全身全霊なんです。
人生を賭けて社会的キモさを受け入れて、それでも「好き」だ!と。
「立体にして手に持ちたい、見たいと思った」(ボーメ、某インタビュー)
鳥肌が立ちました。
かっこいい。
「今のゴジラはあかん。ゴジラのほんまの色がどうの、顔の形がどうの。そんなんとちゃうんや。井上工房の2メートルのゴジラは、そんなセコいもんとちゃう。井上くんのイメージのゴジラなんやから。色もそうや。ゴジラのイメージは燃えさかる紅蓮の炎や。そやからゴジラは赤く塗る。これがアートや!」
海洋堂の創業者が語った言葉らしいんだけど。
もうね。
熱、熱気、火傷ですほんと。
フィギュアやっべー!!!!
ってなるやん、そんなん。
- 作者: 岡田斗司夫
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2008/04/25
- メディア: 文庫
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この凄い熱気を感じながらも、やはり対象はエログロである。
慎重に行きたいと、足踏みしました。
自分としては、身体の造型と顔があまりにかけ離れているような気がしてしまったからです。
なんだか矛盾を感じてしまう。
理想は良いのだけれど、理想的過ぎやしないか、と。
マリアがキリストの亡骸を抱えるピエタ。
ミケランジェロの造型だという。
1500年前後に完成したといわれるこの立体も、理想像であるに違いない。
あるいは信仰の象徴としての崇高な存在。垂直的なもの。
けれど、圧倒的なその説得力はなんだろう。
芸術ここに極まれり、言い過ぎではない。
理想としての造形が、矛盾や違和感を超えて訴えかけるもの。
見えない圧倒的なものに固唾を呑むのだと思う。
そこに芸術が在るのではないか。
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それでも同じくらい感動させられたんだ。
フィギュアに。本当に。
払拭できない違和感、突き抜けられない理想。
理屈じゃないものが大衆を魅了する現実。
それで芸術(アート)や!赤い色に燃えさかった紅蓮の炎や!
何をアートと感じるか。何に赤い炎を見るか。
それは個人の自由だし、未来が決めるという要素もある。
フィギュアに赤い炎を見たことなんて初めてだった。
そういう目線(価値観でもいい)でフィギュアを、美少女フィギュアを見られるようになるとは想像もしなかったことだ。
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そういう個人的な燃え(萌え)が確認できて、嬉しかった。
そして様々なフィギュアを調べていくうちに吉沢光正の造型を知った。
そのフィギュアには肢体と顔に感じた違和感、矛盾みたいなものが無かった。
想像上の神を立体化したミケランジェロと同質の均整を感じた。
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吉沢光正は山下しゅんやのこの一枚のイラストから、立体を産み出す。
見えない背中、たった一枚の紙に描かれた美少女のイラストが。
結晶化して浮き上がっている。
めちゃめちゃすげぇ。
燃え盛ってる!
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そういうわけで、吉沢光正のフィギュアを物凄い勢いで購入したし、
これからも購入し続けようとかたく決意したんです。
綾波レイ、セラちゃん、イノ、リリス、キャミィ、のんのん、ポイズン所有。
あー、キモっ!!!!(肯定的に)